【元記者が教える】記者クラブの実態って?

最終更新日: 2024年01月11日(木) PRのヒント

プレスリリースの配信を行う手段といえばPRTIMESや@Press、Prasyなどのワイヤーサービス、もしくは直接記者にメールやFAXを送る、そのどちらかを思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。
もちろん、ワイヤーサービスや個人連絡も有効的な配信手段ですが、さらにメディア露出の可能性を広げる方法として、今回は「記者クラブ」を紹介します。
とはいえ、「記者クラブ」に行ったことがない広報担当者には、どんなところなのか想像がつきづらいかもしれません。
そこで、実際に以前記者クラブにも在籍していた地方新聞の元記者であるPR戦略局の金崎に、「記者クラブ」がどのような場所なのか、その実態を教えてもらいました!

1.記者が常駐する記者クラブって?

―まずは金崎さんに記者クラブを一言で表していただきましょう。

いきなり大喜利ですか(笑)
記者クラブは、テレビ局や新聞社から同じ専門分野の記者が集まって常駐する場所です。ここで毎日、記者は、関係機関からの情報提供を受けます。記者クラブの棚には日々膨大なプレスリリースが「投げ込み」されており、記者の重要な情報源の一つになっています。

実際、日本新聞協会は記者クラブの機能を「公的情報の迅速・的確な報道」、「公権力の監視と情報公開の促進」、「誘拐報道協定など人命・人権にかかわる取材・報道上の調整」、「市民からの情報提供の共同の窓口」と定義しています。メディアがスムーズかつ正しい報道をするための場所とも言えますね。
記者クラブには、業界団体関連の記者クラブである「兜俱楽部」「重工業研究会」と、官公庁関連の記者クラブ、政党関連の記者クラブの大きく分けて3つがあります。広報担当者としてよく使うのは「重工業研究会」「東京商工会議所」や、ローカルメディアに向けて発信するのに便利な県庁の記者クラブなどがあります。プレスリリースの内容によって、配信に適した記者クラブを選ぶ必要があるので、どのような記者クラブがあるのか大枠だけでも覚えておくことをおすすめします。

2.記者クラブでは定番用語“投げ込み”

“投げ込み”は、企業や行政、団体・個人などのプレスリリースの作り手から、記者クラブへ直接プレスリリースを持ち込むことを意味します。特に官公庁や地方自治体が発信するような情報や、株価に関わるような大手企業に関するニュースなど、社会性の高い情報は、記者クラブへの投げ込みに適しています。ワイヤーサービスで不特定多数に情報を提供した場合より、メディアに取り上げられる確度が高まることも期待できます。一方で営利目的の情報を記者クラブは避けがちなので注意しましょう。

私も記者時代は都道府県庁内にある記者クラブに所属をしていました。
毎日、省庁からの発表も含め数十から数百ものリリースが投げ込まれます。じっくり目を通す時間はないので、見出しや開催時期・場所など最低限必要な情報を見て、関係する記者に割り振っていました。転送するだけでもなかなか骨の折れる作業で、正直なところニュース性の薄い話題はボツにすることもしばしばありました…。

3.“投げ込み”はこの流れをおさえればOK!

まずは、該当する記者クラブをリサーチするところから始めます。基本情報をまとめているサイトや、県政の記者クラブだと自治体の専用ページもあるので、【投げ込み方法】と【必要部数】を確認します。記者クラブによって異なるので都度確認しましょう。
STEP2で確認した方法に則って、プレスリリースを用意します。その後、記者クラブにプレスリリースを送るか、持参すれば完了です。配信日時やリリース概要は、前もって記者クラブに伝達する必要がある場合が多いので、記者クラブへの配信が決まった段階でチェックすることを心がけてください。
もし、記者クラブに直接投げ込みしに訪問することができても、記者クラブによっては、記者とのやり取りを規制されている場合もあります。規制の有無にかかわらず、突発的なニュースを扱うことも多い仕事ですので、どんなにメディアの意見が聞きたい場合にも、強行突破で進めることは避けましょう。

4.元常駐の記者が答える質問あれこれ

まだまだ謎が深い記者クラブについて、長年記者クラブに常駐していたという金崎さんに、一問一答形式で「記者クラブのギモン」に答えていただきました!

―記者は記者クラブにどれくらい行っているんですか?

取材の時間を除いて、ほぼ記者クラブにいる感じです。基本的に会社(新聞社)には出社せず記者クラブに行って自分の机で原稿を書いていました。

―記者同士は、媒体関係なくコミュニケーションを取っているイメージがあります。

記者クラブのメンバーは、他社より先駆けてニュースを報じるべく、お互いライバルではありながら、同志のような一面もあります。同じテーマを扱うため取材先で会う機会も多いですし、自然と仲良くなりますね。紙面に関わる内容でなければ記者クラブ内で談笑していることもあります。

―PR業界に入った時、記者クラブへの投げ込みタイミングには注意するべし!と教わったのですが、他にも、記者クラブならではのご法度があれば教えてください。

そうですね、記者クラブによって、投げ込みする順序や手段は定められているので、そのルールは守るように気を付けましょう。他に、ご法度というほどのルールはありませんが、営利目的のリリースや過度な売り込みは記者の心象を悪くする可能性があります。また、メディアによる情報格差がないようにプレスリリースの配信日と投げ込みのタイミングを合わせるなどの配慮も必要かもしれません。

―最近はメールやFAXでの投げ込みも多い印象ですが、実際に訪問した方が確度高まるということはあるのでしょうか?

前提として、記者の仕事は情報を取ってくること。あくまで媒体との親和性や情報の中身によって判断するため、メールやFAXだから掲載確度が低くなる、ということはありません。基本的に情報提供は歓迎ですし、顔の見える関係を築くのは良いことだと思います。ただし、記者はその日の業務に加え、突発的な事案に対処しなければならないなど忙しくなる瞬間もあります。必ずしも訪問がベストなわけではありませんので、事前に記者クラブのルールなどを把握して、お互いのメリットになる時間を過ごせると良いと思います。

―――分野の担当者に一斉に情報発信ができる記者クラブは、適した使い方をすることでメディアアプローチの確度を高めると同時に、PR業務を格段に効率化できる手段の1つです。一方で、情報の受け手である記者からすると、膨大な情報の中からよりニュースバリューのあるネタを選ばなければいけません。
KMCでも記者クラブの活用時には、必ず記者クラブのルールを見直して、メディアに提供する情報と媒体との親和性を確認してから投げ込むのが基本。適切に活用し、露出拡大を目指しましょう。

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